last updated '08/09/22

 ティランジア(エアープランツ)の無難な育て方。

関連: ティランジア入手 / 栽培株
 

銀葉種の普及種、ハリシー

 葉に鱗片(トリコーム)を持ち白く見えるティランジアを、銀葉種と呼ぶ。この種は基本的に光を好み、室内であれば明るい窓辺に置く必要がある。けれども、直射日光は葉焼けを起こすので避ける。薄いレースのカーテン越しが望ましい。屋外でも同様に、ある程度は遮光する必要がある。例外的に、アルビダやチアペンシス、パレアセアなど直射日光に耐えられる種はある。
 十分な日照が確保できなければ、育成ランプ(ビオルックス - 蛍光灯タイプ、プラントライト - 電球タイプ)などを使って補ってやれば良いだろう。後述する、半日陰を好む種を集めるという手もある。
緑葉種、ブルボーサ 'ギガンテ'。半日陰で水を好むが、通風を意識する。
 葉に鱗片がほとんどなく、触った感触も滑らかなものを緑葉種(*)と呼ぶ。この種は自生地の森林性が高かったりより湿潤であったりするので、半日陰の環境で育てる。

(*)
  正確には レイボルディアナのような、観葉植物に近い&完璧に鉢ものを緑葉種と呼ぶ。
  ここでは便宜上、ストリクタやブッツィー、ブルボーサなども緑葉種とします。半日陰で水を好み、鱗片がほぼ見られないもの。本来であれば↑は銀葉種に分類されるのですが、典型的な銀葉種と性質はかけ離れていて、全く別と考えたほうが失敗はないでしょう。

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吸水中

  大前提として、ティランジアは乾燥に対しては段々と弱るが、水を与えすぎると途端に腐ってしまう or ばらばらに。初心者によく見られる失敗は、ティランジアは質感が乾燥しているためか、勘違いして風も無いのに頻繁な水やりをして腐らせている場合がほとんどである。よって、過度の水やりは控える。
 自生地では夜間、大量の霧が発生している。ティランジアはその間に水分を吸収し、昼間の乾燥と風に耐えている(緑葉種の自生地はそれほど乾燥しない)。このような水の条件を再現するために、水やりは夕方か夜間に行う。昼間だと日に当たり→蒸れて一発で腐るので避けること。
 水やりの方法は二つ。ミスティングとソーキングがある。ミスティングを主にし、ソーキングを補助にしたほうが失敗は少ない。
・ミスティング - 霧吹きでたっぷりめに水をかける。
・ソーキング - ミスティングしていても乾燥した状態になってきた場合(葉に力がなくなる or しおれるに近くなる)、水に漬け込んでしまう。冬季、水温がかなり低いようであれば、10度以上 or 室温と同じ程度の水温にするのが望ましい。時間は3〜4時間。8時間と書いてある場合が多いが、植物への負担と失敗を避けるため、長時間は漬け込まないほうが無難。ソーキングして忘れ→丸1日放置なども避けられるだろう(忘れると大抵死ぬようだ)。
 ソーキング後は水を切ること。葉の付け根に水が残った状態で日中を迎えてしまうと、その株は深刻なダメージを受けるか腐る。

 頻度は環境により大きく変わるため一概には言えないが、通常の銀葉種で週2、3回のミスティング+月1回のソーキングになるだろう。また、季節によっても変わり、夏季(蒸れを避けるため&若干の高山性があるため)と冬季(耐寒性を高めるため)は減らす。成長期以外の水やりを控えるのは、園芸の基本中の基本である。嫌がる植物に過度の水を与えても負担になるだけだ。初心者は従うように。でないと必ず失敗する。
  やや水を好む銀葉種や水を好む緑葉種は、上記の頻度より多く与える。e.g. 隔日のミスティング+月2、3回のソーキング

追記:
 ソーキングに触れているが、筆者自身はソーキングをほぼ行っていない。ソーキングをするならばミスティングを施す、もしくはミスティングの回数を増やす。ソーキングをしなければならないという状況自体、植物にとってはかなりの負担になっている。ソーキングはあくまでも禁じ手 or 緊急事態と考えよう。
 当たり前だが、ソーキングが主という環境は、過度の乾燥から(呼吸できない)超湿潤の間を揺れ動いている状態である。植物の成長にとって良いといえるだろうか。
 また、単純に、ソーキングを繰り返していると、見事な銀葉種では鱗片が剥がれ落ちるようだ。


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温度

 室内の場合、冬季はそれほど意識する必要はないだろう。ただし、室内でも物が凍るような厳寒の地域は、ちょっと厳しいかもしれない。屋外の場合、最低気温が10度を切り始めたら室内に取り込むようにする。
 冬季でも10度以上が理想。凍らなければ、成長のスピードは急激に落ちるが越冬はする。一般的に、緑葉種より銀葉種のほうが耐寒性は高い。

 夏季は通風に特に注意する。締め切った暑い部屋での長時間放置は、確実に蒸れて腐るので避けること。対策としては、
・窓の外(*)によしず等を使い、日光そのものを緩和する(これだけで室内の気温は3度ほど下がるそうだ)
・卓上扇風機 or 園芸用ファンの風を、少し離れたところから当てておく
・光熱費を気にしない人は、冷房を緩めにかけておく
 などが考えられるだろう。
 屋外の場合は葉焼けや極度の乾燥を引き起こすので、強めの遮光を施したり、北側に移動すること。

(*)
 「外」に設置すること。でないと日光を弱めるだけで、室温を下げることにはならない。

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肥料

 肥料なしでも育つ。与える場合は春と秋の成長期を中心に、水で2000倍以上に薄めた液肥(ハイポネックス等)を、ミスティング時やソーキング時に使う。
 筆者は3000〜4000倍ぐらいにして、成長期(春秋)に月1、2程度使っている。頻繁に与えると徒長の原因になるし、液肥が葉の上で濃縮されていったり、鱗片が肥沃になりコケ等が発生するからだ。コケが発生した銀葉種の見栄えは、かなり悪くなる。
 しかし、繁殖に重きを置くならば、濃度と頻度(2、3週間は空ける)さえ守れば(言い換えれば肥料焼けを避ければ)、あまり神経質になることはないだろう。

追記:
 肥料も成長期以外は避けるのは、園芸の基本。弱っている植物に無理に〜(以下略)。

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設置

バーク。樹皮の小片。サイズが数種あるので、
鉢にあったものを選ぶ。

大型種は吊してしまうと楽だ(ラティフォリア 'ギガンテ')。この株は根元にバークを使っている(水多めの栽培に向かないため)。
  室内の場合、小さな株は針金で作ったスタンドで吊るしたり皿に置いたり、レイアウトは比較的自由だろう。ただし、ある程度大きかったり気を使うのであれば、温室や屋外(長時間の適度な日照と風通しを期待できる場所)で、素焼きの鉢にバーク、軽石混じりのサボテン用土などを入れて、その上に置くか植え込む。軽石混じりのサボテン用土は、岩着生のティランジアに合う。
 ミズゴケは緑葉種に使うと良い。または、温室や屋外の大型銀葉種に使っても、過乾燥を避けられたり、旺盛な成長を期待できる。
 そのまま着生させてもいいし、着生させなくとも多少の水分管理をバークや土がしてくれるので、栽培成績は良くなる。
 また、温室や屋外だと常時、空気が動いているので、水やりもジョウロやシャワーで「軽くかけて濡らす」感じで全く問題無い。日照の面でも明るさや時間を測れば一目瞭然で、温室や屋外のほうが優れている。外置きは楽で成長にも良しなので、逆に窓際には考えて置こう。

 屋外の場合、一部の種(ファシキュラータなど)を除いて雨ざらしは避けること。水分管理が非常にしづらくなる。23区内だと雨はかなり汚く、白い株が汚れるというのもある。乾燥に強い長茎銀葉種であれば、軒下に吊ると手っ取り早いかもしれない(アルビダやパレアセアなど)。風で飛ばされないようにすること。

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理想的な環境

これぐらいの大きさでも理想的な環境を作り出せる。
  遮光を施したある程度以上の大きさの、そして(周囲に高い遮蔽物が無い)日照時間の長い温室が、環境的に一番コントロールしやすいし、植物にとっても理想的な環境になりやすい。一般的な環境と比較すると、徒長のしにくさ加減や育つスピードの差となって顕著に出る(ティランジアに限ったことではなく、他の植物でも)。
  極端な温度上昇と下降が起こりやすいので、あまりにも小さな温室はお勧めしない。特に閉めきりがちな冬期は、空気の動きがかなり悪くなり、蒸れの原因にもなるだろう。

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繁殖

 1〜3年の間に(種、個体によりまちまち)花を咲かせた後、1、2本の子株を生じる(花を咲かせないで生じる場合もあり)。子株は段々と成長し、親株は自然に枯れていくので、積極的な株分けは必要ないだろう。親株がなかなか枯れない種もあり、その場合はクランプといって株の塊になっていく。

 花で自家受精をし、綿毛のついた種子ができるものも存在する。この場合、種子をヘゴ板やコルク板に擦りつけ、朝夕たっぷりと水をやり乾燥させないようにすると、一週間ほどで発芽する(古い種子は発芽しない)。最初の1年間、苗はとても弱いため、朝夕の水やりは続け、乾燥を避ける。遮光を強めに、風通しの良い場所で蒸らさないように育てる。
 こうして実生(種子から発芽して成長すること)した株の成長は大変遅く、親株と同じように花を咲かせるまで約5年、大型種で約10年とされる。親株から栄養を貰って育つ訳ではないので、それだけ時間がかかるのだろう。

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