母が亡くなった

 11月3日(祝日)、朝4時頃、母の部屋で大きな物音がし、姉が気がつき様子を見に行った。母は姿見と一緒に倒れており、姉は父を起こしに。
 父は母をベッドに座らせ、(睡眠導入剤のせい)と判断、母を寝かせベッドの端に座り、朝まで様子を見てしまう。この時、母は言語障害が出ており、もう脳にダメージがあった。母なりに状況を説明しようとしていたが、父と姉に「意味がわからなくて…」とされてしまう。
 朝の8時になり母の意識レベルはさらに低くなり、ここで救急車を呼ぶことに。この時、自分も呼ばれたが、もう下記の状態だった。
・目の焦点を合わせられない
・呼びかけに反応できない。話せない
・右半身麻痺(座ってはいられる)
・顔色蒼白
 救急車で搬送後、即検査。左脳の比較的太い血管が詰まっており、脳梗塞と診断される。発症からすでに4時間半が過ぎており、rt-PAと呼ばれる血栓溶解剤は使えなかった(文字通り血栓を溶かすので、使用できると予後が良い)。4時間半を過ぎていると逆に出血を引き起こす可能性があり、使えない。そのためそれ以外の、通常の治療が進んだ。
 母は脳卒中(脳梗塞も含まれる)患者で構成、そして24時間モニターされ、家族のみ面会できる病棟、病室に入った。病院到着から約2時間後、面会した時は母の意識レベルはかなり上がり、家族を認識、話を理解でき、自分が置かれた状況も理解し、安心したせいと悲しみのせいか、しばらく泣いていた。
 翌4日、会いに行くと右足は動くようになっており、話を理解し笑ってもいた。ただ、発語ができずにもどかしそうだった。よく話す人だっただけに辛かったと思う。病状は、通常であれば脳の1/3が死となるぐらいの太い血管が詰まったが、不幸中の幸いか、部分部分(2箇所。小さくはない)が失われた状態だった。
 ある程度落ち着いてからリハビリが始まり、車椅子でトイレに連れて行ってもらい自分で用を足せたり、食事も左手でスプーンで食べられるようになっていた。自分は平日も、仕事が終わってから毎日会いに行っていた。家族は脳外科手術(左側、頭蓋骨表面に走っている血管を中に引き込み、血流が悪い部分を改善)、リハビリ病院(急性期が終われば転院しなければならない)なども視野に入れ始めていた。
 11月18日の夜、いつも通り仕事帰りに会いに行ったが、母は疲れていたのか寝ていたため、無理に起こさずに
「またね」
 と小さい声で呼びかけ、その日は帰った(脳にダメージを負った人には休息が必要)。これが、心臓がまともに動いていた状態の母と会うのは最後となる(家族の中でも)。
 翌19日(土)朝6時ぐらい、父に「母の状態が良くない」とインターホンで叩き起こされる。家族を車に乗せ病院に急いだ。雨がかなり降っていた。病院に着いた時には母はすでに心肺停止となっており、心臓マッサージが行われ、人工呼吸器が付けられていた。医師より
「強心剤も使って40分ほど蘇生を試みているが、心臓の反応が出ない」
 と告げられる。心臓はいきなり止まってしまったに近い。しばらくは続けてもらったが、家族全員で
「もうやめていただければ」
 と申し入れた。この時は無論、母は暖かかった。呼吸器が付けられた状態で、母の心臓から電気的信号が無くなるまで(心臓は収縮できなくとも、しばらくは電気的信号を出す)、皆でベッドのまわりに座っていた。そのうち電気的信号も出なくなり、呼吸器やモニターを外してもらった。
 病理解剖はしなかったが、心筋梗塞による心停止で亡くなった。通常、脳梗塞で倒れ死に至る場合、より病状悪化、脳死で心臓は動いている場合が多い。しかし母は弁膜症で手術歴もあり(心臓を一度止めて摘出、元に戻している)、今年の夏頃にまた調子を落とし、狭心症と診断されていた。諸々の要因が心臓に出た。
 本人の生前の意思を尊重しほぼ密葬で、自宅で22日通夜、23日葬儀を行った。病院から帰ってきた母の状態は顔色含め本当に驚くぐらい良く、冷たい以外は、皮膚や肉は柔らかかった。姉や孫に薄い死に化粧された後は「化粧を落とさずに寝てしまった」ぐらいに見えた、例えではなく。
 病院に会いに行くのが完全に日課になっていたため、母が自宅に戻るまで死を受け入れられず、(まだ病院で闘病している)という意識がどこかにあった。でもやはり違った。ありがとうとごめんねばかり祈っていた。あとは、またね。
 線香は通夜の時からあげられるようになった。
 母は今では骨となり、自宅で(葬儀をした部屋に)納骨まで置かれる。納骨は年明け連休中に。
 通夜、葬儀をした部屋の改修や(バリアフリーにして空き部屋になっていた)、墓を都内に作ったり(元は遠い徳島にあった)、全てやることはやって逝った人だった。病も大腸がん(手術歴あり)、前述の弁膜症、脳梗塞と全部やった。その度に(元気な時に親孝行しておけば良かった)とつくづく思った、今回含め…。

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