2006/9/16〜

概要

 地図は マレーシア政府観光局のコンテンツから。東マレーシア、サバ州に属し、インドネシアとの国境近いシパダン島。'88年にジャック・クストーが行き、ヨーロッパの雑誌に初めて紹介され世界に段々と知られるようになった。クストーいわく「45年前の驚異の海がそこにある」と絶賛している。
 黎明期のダイバー達はもちろんテント(十数人のみ滞在可)を拠点にして、ダイブ・サイトにエントリーしていた。シュモクザメの群れが深場でない深度から巨大な壁になっていた(黎明期にダイブしている現地インストラクター / ガイドから聞いた)ほど衝撃的な海だったのは、もちろん人が入っていなかったというのはあるが、地形的に稀有でボルネオ島から深海で切り離されているため。まるで外洋の隠れ根的要因と、栄養分が豊富な(けれども透明度は高い)深海からの海水が、長い時間をかけてシパダンの海を築いた。シパダンの海は元々、珊瑚がずば抜けて元気で透明度も高かった。
 カメの卵を採集して一人で生活していた現地のおっちゃんから、ボルネオ・ダイバーズが「ダイビングをしてよい権利」を買ってから実はそれほど経っていない、歴史的には比較的新しい世界三大ダイビング・スポットのひとつ。

 日本人含め人々が大挙して滞在、ダイブしたのは'94年以降。1周を徒歩で2、30分ほどの島にリゾートが5、6軒も建つという異常な事態に。マレーシア政府が自然保護の観点から入島制限を施したが時すでに遅く、黎明期を知るダイバーからは「カメが多いだけのどこにでもある海になってしまった」と表現されるほど荒廃した。
 '00年4月にはアブサヤフ(イスラム系過激派)による外国人ダイバー20人拉致という事件が起きて(被害者の一人は首を切断されている。拉致された期間は半年に及ぶ)→その時期は訪問者ががくっと減った。また、最終的には政府勧告による島内リゾート撤去に至っている(近くのマブール、カパライには存在する)。
 しかし、海の荒廃は続きそうな気がして、行くのなら早いうちに行っておいたほうが良い感が否めなかったのが、今回のアクセスの動機。リゾート・ステイではなくクルーズ( セレベス・エクスプローラー)を利用した。シパダンだけではなくシ・アミル島周辺にもダイブできるため。

実際

 自分でダイブしてみてじゃあどうだったのというのを記しておくが、人を恐れない亀と魚(カマス、ギンガメアジ等)は確かに多い。綺麗に撮れなかったので掲載していないが、サメもメジロザメ、ネムリブカ、トラフザメを見ている。ただ、珊瑚は荒れているところがやはりある。また、透明度は、抜けるような青と表現できるような状況には一度も遭遇しなかった。乾季に訪れているが、曇りと風雨にも2日ほど祟られている。大きな低気圧が通ったのか、午前3、4時頃、船が派手に揺れて起こされたのを一度経験した(決して小さなクルーズではない)。
 シパダンに4度訪れているゲストから聞いたが、5月前後に2度訪れたらいずれも抜けずダメで、7月が一番良かったと言っていた。シパダンの海も安定せず、どうやら運に左右されるようだ。黎明期は違ったんだろうけどね。ちなみに、シーズンは乾季の4〜11月。その中でも海況良好とされるのは4〜8月。
 ダイブ・スタイルはリゾート近くのハウス・リーフなどを除いて、緩やかな流れの中をドロップ・オフやウォールに沿ってドリフト(流す)。流れに逆らって根になるべく粘る、というようなことはほぼ無いので楽。ただし、ロープにつかまっての潜行、安全停止は皆無だったのでそれなりのスキルは必要。
 セイフティ・ダイブで潜水時間は45分が守られていた。ログを見ても例外的な54分というのが最長である。深度もそれほど深場には行っておらず、27.4mが最深。が、これは透明度が高くなかったり曇りが重なったりで、ガイドによる「深く行ってもおもろない」という判断のためかもしれない。よって、全て無限圧潜水で行われた(無論、安全停止はしている)。
 現時点では日本人スタッフおよびガイドは乗船しておらず、片言の日本語を話す現地ガイドがいる。

 シ・アミル島周辺は人があまり入っていないせいか、ハード&ソフトコーラルがやたら元気なスポット。手付かずというか痛んでいないものがびっちり。魚的にはマクロサイトになる。
 あれで透明度が高かったら滅多に観られない光景だったと思う。まぁ透明度が並みでも滅多に観られないが。世界中、ほとんどのスポットで白化と破壊が進んでいるから。

 それではいつもと同じように、写真は時間的に編集をせず、ぽつぽつと取り上げていくことにする。


 いきなりセンポルナ港。典型的な東南アジアの港町で、お世辞にも海は綺麗とは言えない。ここから小型のスピードボート(ダイビング用。サイトまで運ばれエントリー&エキジットする。セレベス・エクスプローラーは2艘装備)でクルーズに乗船する。
 後述するが、ここまで来るのに結構疲れている。


 
 マブール。
 シパダン近くのリゾートの島。クルーズを利用しないダイバーは、ここかカパライにステイし、ボートでシパダンにエントリーしに行く。
 クルーズはマブール沖に停泊することが多かった。