イントラレーシック(屈折矯正手術)雑感

e. 医学


 最近、イントラレーシックと呼ばれる対近視手術を受けている。理由は、料金的にも技術的にも、現在ではかなりポピュラーな手術と判断できたため。具体的な術式はこちら(品川近視クリニック)を参照。
 少し前まではレーシックと呼ばれ、眼の角膜に作るフラップ(ふた)は特殊な器具を使って作っていた。けれども技術の進歩により、フラップ作成もコンピュータ制御によるレーザーで、正確、緻密に行われるようになった。
 この手の自由診療な手術は、タイのおかま手術の如く、症例が多ければ競争が発生し技術も進む→手術を受ける人がさらに増える→症例が多ければ競争が発生し技術も進む…という現象が起きている。完全に経済活動の一つだ。
 どこを見ても「手術は簡単。翌日には別世界。お勧め」というような感想があふれる中、あえて別視点で雑感をまとめておく。上記は確かにそうではあるが、一方、眼をいじる立派な医療行為 or 手術なので、それなりのえぐさがあることは事実。削った(レーザーにより蒸発した)角膜は元には戻らない。自身はお勧めはしない。本人が決めればいいと思う。
 手術を受けた人にとっては「ああーそうなんだよねー…」と同感してもらえれば幸いだし、手術を受けようと考えている人には参考になれば。
●手術
 手術は夕方に行われた。その前の詳細な検査などの記述は省く。大きな白いクリニックに、多くの人が次々と検査を受けに来ていて、手術も多くの人が受けていくのをイメージしてもらえれば。
 当日は何も予定を入れないこと。何かしらの手術を受けたことがある人は理解できると思うが、手術自体は苦痛が少なくとも、麻酔が覚めた後は大変だ。詳しくは後述。翌日も休日にしておくのが望ましい。
 前出の術式に沿って話を進める。
1. 待合室で呼ばれ、点眼麻酔をかけられた後、フラップ作成の手術室へ移動する。この移動するというのは今後、「歩いて」という認識で。表面だけの麻酔なので、もちろんはっきり見えている。
2. さ、レーザーによるフラップ作成だ。片眼ずつ行われる。開眼器で思いっきり眼を見開いた状態にされた後、機械が下りてきて顔が固定される。照射されている間、目線ずれたり瞬きしたり頭を動かしちゃったらどうしよう、という不安がかなり強く起こる。もちろん、固定されているんだけど。
 実際に照射される時間は2秒ぐらいか。眼の表面をレーザーが走り、くりんと切られるのがわかる。望んでおいて「ああやられた」と思った。
 視界は途端に霧がかかった状態に突入する。両眼フラップ作成の後、角膜を別の機械によるレーザーで削るため、看護師に付き添われ別室に移動する。うわほんと見えねえ。
3. 再び片眼ずつ、思いっきり眼を見開いた状態にされ→フラップをぺろりとめくられる。視界がにゅるんとズレる。頭の中にはあの有名な(結局はガセだったけれども)宇宙人解剖の、眼の膜をめくるシーンが鮮烈に蘇る。まさか自分が体験するとは。
 「光をぼんやりと見ていてください」と言われるが、前出の「目線がずれたり〜」という不安がまた強く起る。今度は機械が下りてきて→そのまま固定という訳ではなかった。自由度的には、がちがちではない。
 照射時間は自分の場合、右眼8秒、左眼6秒のはず(たぶん。どっち)。医師が照射前に「●秒照射」と声で確認するからだ。
 照射されている間、フラップを作ったときとは違い触覚的(?)にはあまりわからない。ただ、匂いがする。もろ髪が焦げる匂い。あー焼けてます。
 角膜は蛋白質でできていて、それをレーザーで蒸発させるのだから、当然といえば当然なんだけど。
4. 綺麗に洗われ、フラップを元に戻される。ピントが合わなく、よく見えないレンズ越しに水をにゅーーと掛けられ(自分の眼だ)→めくられた逆の手順で視界は展開する。
5. 術後はまた別室に移動して、15分程、目を閉じて休む。「涙の分泌が減るので寝ないように」と言われる。寝られる奴は相当な神経に違いない。
 休息後、視界は霞むなぁ程度にもう見えている。診察を受けた後、当たり前だが帰る。
 手術自体の苦痛は少ないが、開眼器がプレッシャーになるのと、精神的ストレスはかなり大きい。眼から入る情報というのは、何かで読んだ記憶では、全体の感覚の80%も占めるという。それが直接、ミスが許されない状況下でいじられるのを認識し続ける、というのを想像してもらうと少しはわかるか。
●術後
 帰路、保護メガネをかけているが、途中で目を開けているのが辛くなる。目がしみて涙が出始める。麻酔が切れ始めたからだ。
 電車ではドアのすぐ横に立って、目を閉じて過ごすしかない。たまに見る、ガラスに映る自身の目は酷く潤んで充血していて(開眼器の影響が手伝い、まぶたもかなり腫れぼったい)、丸1日泣いてもここまではならないと思う。
 駅に近づき、ドアが開くと目を開けて状況を確認する、を繰り返す。覗き込んで乗ってくる奴もいて、猛烈に腹を立てる。が、今は小学生にも確実に負ける。
 夜道は涙と術後の影響で、光がやたら滲んで眩しい。傍から見たら、感情に駆られて泣いて帰っている人だろう。冷たい風も強烈に嫌で、たまに目をつぶりながら歩く。あ”あ”あ”早く帰りたい。
 このように帰りはとても面倒。誰かに車で送ってもらうのが理想。
 術後の苦痛は1〜4時間後、かなり派手に出る。先ほども書いたように、ものすごくしみて涙が止まらない。目を開けていられない。
 1時間毎に3種類の目薬を差しつつ、目をつぶりじっと座っているしかない。iPodや普段聞かない携帯のFMを聞いて過ごした。CDは選ぶことを考えたらとても億劫で聞けなかった。TVはありえないので却下(元々、当日は禁止)。
 午前1時頃には、症状は楽になってきていた。今日は5年分は泣いた。もっとかも。
 寝るときはこの日を起点に1週間、このようなプラスティックのシールドを、テープで×印に留める。寝ながら触ってしまうのを防ぐため。ところで、術後5時間は寝ないように指示された(寝てしまうと涙の分泌が減るゆえ)。
●翌日
 寝起きだというのに、裸眼でやたら見えていることに違和感を感じる。
 検診に行くまで、PCでメールチェックなどをせざるをえないので、1時間ほど作業したらすぐ疲れてしまった。鏡を見ると眼を充血させてしまっている。うわいかんいかん。
 外の景色がこれまた明るく派手だ。ハリウッドの精緻な風景的映像の勢い。検診では裸眼で両目とも1.5出ていた。過去は右:左 = 0.15:0.3だった。乾き目がちなので、涙型目薬を追加で処方される。
 この日の見え方は、コンタクトレンズを入れて6、7時間ぐらい経った見え方に近い。視力自体は出ているが微妙に霞んで、特に夜は光が滲んで見える。「夜は光が滲んで見える」のはレーシックを受けた典型的な症状で、1、2カ月すると消失するようだ。
 術後1週間は、髪は上を向いて洗うように指示される。目を擦ったり水を入れては絶対にダメだ。この間、アルコール、肉体労働、スポーツNG。PCは疲れたらすぐ止めたほうがいい。傷の治りを遅らせてしまう。いかに目を酷使するかがよくわかる。女性(男性でもいいけど)はアイメイクもNG(ファンデはOK)。
 水泳やダイビングなどの水ものスポーツ、サッカーなどの激しい屋外スポーツは1カ月NG。この間は海外旅行もNG。
●最後に
 上記の手術、労力を経ても、100人に約2人は近視が進み、またあまり見えなくなる。再手術は角膜に十分な厚みが残っていれば可能。できなければ、またコンタクトかメガネ生活。
 最終的な3カ月後の検診が終わっても、かかりつけの眼科を持って、1年に1度は眼底検査を含めた検査を強く推奨される。網膜剥離や緑内障を予防するため。手術前の同意書にもきちんと記してある。
 術後はドライアイが強く出るので、この文章は涙型目薬を差しつつ書いた。物理的に神経の一部を切断していることによる。この症状は徐々に改善するとされているが、元々ドライアイであった人はやはり付き合うしかない。
 余談で、手術5日後の朝、右目の視力が唐突に落ちていた。片目だけよく見えない。平静を装っていたけど、精神的には「うわまじかよ」と心底がっくり。夕方になってもその状況は続いた。前日の、PCで9時間ぶっ続け作業が祟ったらしい(せざるをえなかった)。んなくだらないことは放り投げてしまい、眼を使わないべきだったと心底、悔やんだ。
 やりきれなくなって、1年に一度、眼底&眼圧検査でお世話になっている近所の眼科に行った。手術を受けたクリニックでの1週間後検診までは少し日数があり、とても待てなかった。
 診断の結果は「ドライアイで角膜の表面を傷つけてしまって、見えにくくなっている」。それを聞いて一気に浮上。表面は再生力が高いので、養生すれば数日で元に戻るからだ。事実、翌日には再び視力を取り戻している。
 以上、手術を受けたければ、受けるのは個人の自由、かつ自己責任。

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